ここは某大手企業のグループ会社。
今日も朝から電話が鳴り響き、怒りを堪えながら対応する社員が目の前にいる。
その横で痰を切る老人。激しい咳払いが止まらない人。声が小さいことが上司の機嫌をさらに損ねている部下。
殺伐としている。空気が重い。なんだこの会社は。
こんな会社でみんな働いているのか。
僕はこの会社に常駐する前、何度か打ち合わせで来訪していたが、来るたびに息が詰まる。
何がこんな空間を作り出しているのか。僕は知りたかった。
常駐して1か月が経ったとき、その答えが分かった気がした。
この劣悪な空間を作り出している諸悪の根源は、他人を嘲り、見下し、陥れることしか頭にないモンスター社員だ。
彼らは声がデカい。
だから気にしようとしなくても彼らの発言が耳に入ってくる。もうそれがすでにこの空気作る原因の一つになっている。
自然と耳に入るから自然とストレスがたまる。
すると何が起こるか。
今度はストレスのたまった社員が、同じようにモンスター社員化するのだ。完全な腹いせである。
彼らの言霊が波及することで負の空間を作り出しているのだ。
驚いたことに、モンスター社員は男だけではない。僕はマウンティングする生き物は男が9割だと思っていたが違った。女も同じだ。
女は怒鳴らない。話せば2秒で済む話を延々と続け、叱る。聞き手の僕としては男の言霊よりこっちのほうがストレスかもしれない。
ストレスになるのは、話の長さだけではない。完全に、悦に入っているのがモロバレだからだ。
相手のことはどうでもよく、叱ること自体が目的なのだ。
もはやみんな自分だけが救われればいい。
僕にはこの会社がそんな人の集まりで構成されているように見えた。
僕はそんな会社に業務改善チームとして常駐している。
無駄に厳しい施錠チェック、ずさんな資産管理に振り回され、端末がコロコロ入れ替わる。
インストールされたソフトウェアのバージョンを確認したいと電話がかかってくる。
そんなことそっちが事前に調べておけ、と言いたかったが、それを言ったら僕もモンスター社員になってしまうと思い、舌の先まで出かかった文句を飲み込んだ。
イライラさせるのはモンスター社員だけじゃないのか。
なるほど、一定数、絶望的に効率の悪い社員がいて、彼らがモンスター社員のエサになっているようだ。
悪循環なことだけは実に効率良く回っている。
ハッキリ言って、業務改善する余地のある業務は腐るほどありそうである。
そして、
ハッキリ言って、こんな会社の業務改善など、してやりたくないと思っている。
もちろんモンスター社員は一部であり、彼らの影響力が大きいせいで殺伐としているのは確かだ。
だが、モンスター社員でない社員(村人と呼ばせていただく)に対して業務改善案を提案し、ツールを提供しても、その先にモンスター社員がいるかもしれない。僕が救いたいのは村人である。モンスターではない。
僕の作ったツールをモンスターが使うことで魂が浄化され、村人に戻るのかもしれない。そう信じて自分の仕事を全うできれば良いのだが、なにせモンスターが悪者すぎる。悪者たる所以はマウンティング。高圧的な態度、人格である。
Twitterにて、(おそらく社内で一人だけで)RPAロボットを粛々と作っておられる方々のツイートを拝見させてもらっているが、あまり良い環境下ではなさそうである。
技術的なところというより、対人関係で苦労している人が多い印象だ。
今の常駐先に来てから、彼らの気持ちが痛いほど分かる。
ロボットを使いこなせないことを作り手のせいにする。
いい感じにしてくれと丸投げする。
今の常駐先でも普通に起こりえそうな話だ。
お前らの小さい器と脳みそでロボット作ってみろと言いたい。
働き方改革、業務改善が叫ばれて久しいが、それが思ったより進まない原因は、思ったより根深い。
業務改善には必ず「人」が絡むからだ。
業務改善をするのは人、されるのも人。同じ人なら相性だってあるし、仕事する相手は選びたい。「仕事に感情は持ち込むな」とはよく言うが、感情爆発である。
嫌なやつとは仕事したくないし、何も納めたくないのだ。
自分が作ったものは、良い人に使ってほしい。この気持ちはRPAブーム以前からずっと持ち続けている。
業務改善を仕事にするようになって、人との距離が近くなったことで余計に意識するようになった気持ちである。
とはいえ、僕も生活をかけて仕事をしているわけで、相手を問わず、時には嫌々渋々作っては納品する。
当然、劣悪なクライアントに対してはモチベーションは下がる。人間だもの。
良好なクライアントと劣悪なクライアント、同じモノを納めるとして品質に差があってはならないが、後者の場合はあまり騒いでほしくないので、品質には気を遣うのが普通だ。
だが不思議なもので、気を遣うほど品質が上がらない。効率も悪くなる。
プロダクトの品質を決めているのは技術力ではない、クライアントの人格だ。
仕事相手は人格で決めて良いのではないか。
業務改善する相手は人格で決めて良いのではないか。
人格に難のある人がやる業務など、どうせたかが知れている。
モンスターに押し付けられた仕事を村人がせっせとこなしているのなら、村人の仕事を効率化してあげたほうがきっと良いのだ。
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